乳腺腫瘍について
乳腺腫瘍とは?
犬の乳腺腫瘍の特徴
ほとんどが中~高齢の避妊手術をしていない雌犬に発生しますが、稀に雄犬にもみられます。犬の乳腺腫瘍の良性と悪性(乳がん)の比率は半々と言われていましだが、近年では良性の方が多いと報告されています。良性であれば転移はしませんが、悪性の乳腺腫瘍は肺やリンパ節、腎臓、脾臓、肝臓などに転移を起こし、命に関わる場合もあるため、良性か悪性か診断する必要があります。ですが、良性と診断されても時間が経つと悪性転化(良性腫瘍から悪性腫瘍に変化すること)することがあるため、無治療でいることはお勧めできません。
見た目はイボやしこりのように数ミリサイズの小さいものから数センチサイズのものまで様々です。基本的には大きな乳腺腫瘍ほど悪性の可能性が高いです。
猫の乳腺腫瘍の特徴
ほとんどが高齢の避妊手術をしていない雌猫に発生しますが、稀に雄猫にもみられます。猫の乳腺腫瘍は約80%~90%が悪性で、発見時にはすでに転移していることも少なくありません。犬の乳腺腫瘍に比べ、予後が悪い腫瘍です。
見た目はイボやしこりのように数ミリサイズの小さいものから数センチサイズのものまで様々です。
乳腺腫瘍の原因
乳腺腫瘍は雌性ホルモンの影響を受けて発生します。わんちゃんの場合は初めての発情がくる前に避妊手術を行うことで乳腺腫瘍になる確率が低くなりますが、時間の経過とともに予防効果は低下し、4歳以降の避妊手術では予防効果がほとんどないと言われています。ねこちゃんは避妊手術をすると乳腺腫瘍の発生率が下がり、特に1歳未満で効果的です。
早めに避妊手術を行うことは乳腺腫瘍以外にも子宮や卵巣の様々な病気のリスクを減らすことが出来るため、手術をお考えの場合は早期の避妊手術をおすすめします。
好発品種
犬の品種
すべての犬種に発生の可能性がありますが、特に発症しやすいと言われている犬種は、プードル、チワワ、コッカースパニエル、
ヨークシャーテリア、ダックスフンドなどです。
猫の品種
シャム、日本猫など
乳腺腫瘍の症状
ご家族のワンちゃん、ネコちゃんにこのような症状は出ていませんか?
乳腺組織にしこりができます。胸や脇の下、下腹部、内股までの乳腺に1つあるいは複数個できる場合があり、悪性腫瘍の場合は腫瘍の増殖とともに皮膚が破け出血や壊死が起きることもあります。
悪性の乳腺腫瘍であれば診察時にすでに転移していることも少なくありません。
肺転移が起きている場合は胸の中に水がたまったり、呼吸が荒くなる症状などの症状も出ますので、早期発見が非常に大切です。
以下の症状にあてはまる場合は乳腺腫瘍の可能性があります。
- 乳腺にしこりがある
- 乳頭が赤く腫れている
- 乳頭から黄色っぽい液体が出る
- 元気がない
- 食欲がない
- 体重減少
乳腺腫瘍の検査と診断
①細胞診検査(針生検)
できものができたときに最初に行う基本的な検査です。細い針をしこりの中に刺して、細胞の一部を採取し、顕微鏡で観察します。ただし乳腺腫瘍と診断できても、良性か悪性かはわからないため、最終的な診断は検査用に乳腺腫瘍を少し切り取る、あるいは外科手術で切除したものを病理組織検査(外部検査)に送ることで確定診断ができます。
②血液検査
貧血の有無、内臓の状態などを調べます。
③レントゲン検査
胸やお腹に腫瘍、転移、他の病気がないかを調べます。
④超音波検査
胸やお腹に腫瘍、転移、他の病気がないかを調べます。
乳腺腫瘍の治療
①外科治療(手術)
最も効果的な治療方法です。乳腺腫瘍の手術方法はしこりのみ切除する方法、乳腺を部分的に切除する方法、片側の乳腺をすべて切除する方法、両側すべての乳腺を切除する方法など様々なので、腫瘍の特徴をしっかりご説明させていただいたうえで、ご相談しながら手術方法を決めていきます。再発防止のためにもできるだけ広範囲の切除をおすすめしています。
②抗がん剤治療
手術が難しい場合や、術後の再発を防ぐ目的で使用する場合があります。
当院では点滴・内服などによる抗がん剤治療を行っています。
*悪性乳腺腫瘍の中には「炎症性乳癌」と呼ばれる極めて悪性度が高く、予後不良の腫瘍が発生することがあります。炎症性乳癌の場合基本的に手術は不適応となります。治療の中心は鎮痛剤や消炎剤を用いた緩和療法となり、生活の質をできるだけ維持することを目的とした治療を行っていきます。最近では分子標的阻害薬という比較的副作用の少ない飲み薬の抗がん剤が有効との報告もあり、治療に使用しています。
腫瘍は早期発見が非常に大切です。普段からわんちゃん、ねこちゃんの身体を触ることで早めにしこりの存在に気づくこともあります。また、乳腺腫瘍は若齢時の避妊手術により発生率を下げることができるため、手術をお考えの場合や少しでも気になる事がある場合はお早めにご相談下さい。