リンパ腫について
リンパ腫とは?
血液のがんのひとつです。白血球の一つであり、免疫システムの中で重要な役割を果たすリンパ球が腫瘍(がん)化して起こります。
中高齢の子に発生しやすく、犬では3番目に多い腫瘍です。全身の至るところに発生し、発生部位により様々な症状が生じます。初期の段階では無症状なことが多いため、発見が遅れてしまうこともあります。
リンパ腫の分類について
リンパ腫は大きく分けて3つの分類に分けられます。
①発生部位による分類
多中心型リンパ腫
身体の中にはたくさんのリンパ節がありますが、多中心型リンパ腫は主に顎の下(下顎リンパ節)、首(浅頸リンパ節)、脇の下(腋窩リンパ節)、膝の裏(膝下リンパ節)など身体の表面にあるリンパ節が腫れていきます。体重減少や元気、食欲の低下、熱などの症状が出ることもありますが、症状を伴わないこともあります。犬に最も多いリンパ腫です。
消化器型リンパ腫
消化器型リンパ腫は胃や小腸、大腸に発生します。そのため元気、食欲低下による体重減少、嘔吐、下痢がみられます。猫に最も多いリンパ腫です。
前縦隔型リンパ腫
前縦隔型リンパ腫は胸のリンパ節に発生し、呼吸が苦しくなったり、咳などの症状が出ます。また、胸の中に水が溜まってしまうこともあります。若い猫で多いリンパ腫です。
皮膚型リンパ腫
皮膚に発生するリンパ腫で、皮膚の赤みやただれ、脱毛、フケがでるなど皮膚炎と似た症状がみられますが、発生は稀です。口内炎のように口腔内の粘膜に症状が出ることもあります。
鼻腔内型リンパ腫
鼻の中にできるリンパ腫です。鼻水や鼻血、くしゃみなどの症状がみられ、顔が変形することもあります。
②悪性度による分類
リンパ腫は悪性度により、低悪性度、中間悪性度、高悪性度の3つに分類されます。
悪性度により抗がん剤の種類や余命が変わってきます。
③免疫学的分類
リンパ球はB細胞とT細胞の2種類に分けられます。
B細胞型、T細胞型では治療方法、余命に違いがあるため、どちらのタイプなのか診断する必要があります。
リンパ腫の原因
は猫白血病ウイルス(Felv)感染により、リンパ腫の発生確率が上がります。また、若齢でリンパ腫のねこちゃんは多くが猫白血病ウイルスに感染していると言われています。
リンパ腫の症状
ご家族のワンちゃんにこのような症状は出ていませんか?
多くのリンパ腫でリンパ節の腫れが認められます。他症状は発生部位により様々ですが、どのリンパ腫も病気が進行すると元気、食欲の低下や体重減少などがみられます。
初期段階では無症状なことが多く、診察時や健康診断で発見されるケースが多いため、気になることがあれば早期に検査されることをおすすめしています。
このような症状がみられたらリンパ腫の疑いがありますので、診察をお勧めします。
- 元気低下
- 食欲不振
- 体重減少
- 嘔吐
- 下痢
- 発熱
- 呼吸が荒い
- 咳が出る
リンパ腫の検査と診断
①細胞診検査(針生検)
細い針をしこりの中に刺して細胞の一部を採取し、顕微鏡で観察します。ただし院内で診断がつかない場合は、細胞診や全身麻酔下でリンパ節を切除して専門家にみてもらう病理組織検査(外部検査)が必要になる事があります。
②血液検査
貧血の有無、内臓の状態などを調べます。
③レントゲン検査
胸やお腹に腫瘍、転移、他の病気がないかを調べます。
④超音波検査
胸やお腹に腫瘍、転移、他の病気がないかを調べます。
リンパ腫の治療
①化学療法
リンパ腫は血液に関連したがんなので、抗がん剤やステロイドを投与する化学療法が非常に効果的です。
残念ながら無治療の場合は余命1~2か月と言われていますが、治療を行うことにより、多中心型リンパ腫であれば約半数の子が1年以上、約20%の子は2年以上生きられることもあります。
抗がん剤は状態によって1種類だけを使う場合もありますし、複数の抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法を行うケースもあります。
②外科治療(手術)
症状の緩和を目的として外科手術を行うことがあります。
③放射線療法
腫瘍に放射線をあてて腫瘍細胞にダメージを与えます。実施する場合は大学病院へご紹介します。
リンパ腫は発生部位や悪性度など細かく分類されていて、そのタイプにより治療方法や治療に対する反応も異なってきます。
治療、手術には副作用などデメリットを伴う場合がありますので、ご家族としっかりご相談させていただき、最適な治療をご提案致します。